こんにちは、非鉄金属ナビ運営事務局です。
本日は、日々の取引でもよく目にする「銅スクラップ」について、そのリサイクルの行き先や使われ方をテーマにお話しします。
「銅スクラップって、溶かしてまた純銅に戻すの?」
「インゴットになるの?それとも合金の材料?」
このような疑問を持ったことのある方は多いのではないでしょうか。
今回は、市中で発生する銅スクラップがどのように使われているのか、伸銅メーカーやインゴットメーカーとの関係も含めて、わかりやすく解説していきます。
銅スクラップの種類とは?
まずは簡単に、銅スクラップの種類を整理しておきましょう。
スクラップ名 | 特徴 |
---|---|
ピカ銅(1号銅) | 被覆がなく、非常に綺麗な銅線。高価買取対象。 |
並銅(2号銅) | やや酸化・汚れがある銅。工場くずや配管などに多い。 |
雑銅 | 銅率が不明確な複合物。家電内部、基板、複雑な構造など。 |
真鍮・砲金くず | 銅合金スクラップ。黄銅(銅+亜鉛)や青銅(銅+錫)など。 |
銅スクラップはどこへ行くの?
銅スクラップは主に以下の2つのルートに分かれます。
① 伸銅メーカーへ(銅合金や純銅の圧延材へ)
② 銅インゴットメーカーへ(鋳物用インゴットへ)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
① 伸銅メーカーでの再利用
● どんなメーカー?
伸銅メーカーとは、銅や銅合金を「板」「棒」「管」などに加工する製造業者のことです。
例)
- 電気用銅条メーカー(電線や配線材)
- 給水管メーカー(銅管)
- 建築資材メーカー(真鍮棒など)
● スクラップの使われ方
伸銅メーカーでは、主にピカ銅や並銅など、純度が高く成分が安定しているスクラップが使われます。
これらは新しい銅地金と混ぜて溶解され、製品へと生まれ変わります。
電気導電性が重要な製品では、不純物の少ないピカ銅の使用が必須です。
② 銅インゴットメーカーでの再利用
● どんなメーカー?
銅インゴットメーカーは、鋳物用の銅合金(砲金・青銅など)を製造する企業です。
例)
- バルブメーカー向け砲金インゴット
- 自動車部品用の青銅インゴットなど
● スクラップの使われ方
こちらでは、砲金くず、真鍮くず、雑銅などの合金スクラップが使われます。
これらを一度溶かして成分調整(脱ガス・合金元素の追加)を行い、JIS規格に準じた銅合金インゴットとして再成形します。
ピカ銅のような純度の高い材料は不要なケースも多く、「雑でもいいが、安価で多く仕入れたい」というニーズがあります。
「電解精製」に回されることはあるの?
結論から言うと…
市中スクラップは基本的に電解精製には回されません。
📌 なぜか?
電解精製(純度99.99%以上の電気銅)は、鉱石由来の**粗銅(ブリスター銅)**から作られるのが基本です。
市中スクラップは不純物が多く、
- 電解工程に不向き
- 高コストな電解をスクラップに使うメリットが少ない
そのため、ほとんどは火法精錬によって合金としてリサイクルされるのが現実です。
まとめ|銅スクラップの再利用の主なルートは2つ!
再利用先 | 主に使用するスクラップ | 主な製品用途 |
---|---|---|
伸銅メーカー | ピカ銅・並銅 | 電線・管・板などの圧延材 |
インゴットメーカー | 雑銅・砲金・真鍮くずなど | バルブ・自動車部品など鋳造品 |
💬 最後に:知っておくべきこと
銅スクラップは、選別・グレーディングによって行き先も価値も大きく変わります。
- ピカ銅として伸銅向けに高値で売る
- 雑銅としてインゴット向けにまとめて売る
このように、**「どう分けるか」「どこに売るか」**が、再利用ルートの分岐点になります。
非鉄金属ナビでは、今後も銅をはじめとする各種金属のリサイクル事情を発信していきます。
次回は、「アルミスクラップのリサイクルルートと製品化の流れ」をテーマにお届け予定です。お楽しみに!