こんにちは、非鉄金属ナビ運営事務局です。
スマホや電線、エアコンなど、私たちの身の回りには“銅”がたくさん使われています。
でも実は、山から掘り出したばかりの鉱石には銅がたった1%しか含まれていないことをご存じでしょうか?
今回は、そんな鉱石から純度99.99%のピカピカの銅ができるまでの流れを、できるだけわかりやすく解説します。
🧱 銅ができるまでの5ステップ
銅は次の5つの工程で作られます👇
① 採掘 → 銅1%の鉱石
② 選鉱 → 銅30%に濃縮
③ 製錬 → 銅70%の「マット」
④ 転炉精錬 → 銅99%の「粗銅」
⑤ 電解精製 → 銅99.99%の完成!
それでは順に見ていきましょう。
⛏️ ステップ①:採掘|山から鉱石を掘る
銅鉱山では、主に**黄銅鉱(おうどうこう)という鉱石が採掘されます。
ところがこの鉱石、掘ったばかりの状態では銅の含有量がわずか0.5〜1%**ほど。
つまり、100kgの鉱石を掘っても銅はわずか500g〜1kgしか取れません。
残りの約99kgは“不要な石”なんです。
これをそのまま工場に運んで処理するのは非効率なので、次の工程で“銅だけを集める”作業を行います。
⚗️ ステップ②:選鉱|銅を30%まで濃縮
💡 お風呂の泡と同じ原理?
選鉱では、**浮遊選鉱法(ふゆうせんこうほう)**という少しユニークな方法を使います。
流れは次の通りです。
- 鉱石を細かく砕いて水と混ぜる
- 特殊な薬剤を入れる
- 空気をブクブクと送り、泡を発生させる
- 銅の粒だけが泡にくっついて浮き上がる
- 浮いた泡をすくい取る
まるでお風呂の泡に汚れがくっつくように、銅だけを選んで集めるイメージですね。
こうして、銅の濃度は**25〜30%まで高まります。
この濃縮された鉱石をコンセントレート(銅精鉱)**と呼び、ここからが本格的な“製錬”の始まりです。
🔥 ステップ③:製錬|1,200℃で溶かして「マット」を作る
製錬所では、コンセントレートを**約1,200〜1,400℃の高温で溶かします。
すると銅と硫黄が化合した「マット」ができます。
マットの銅濃度は約60〜70%**ほど。
このとき鉄分などの不純物は「スラグ」として分離します。
油と水が分かれるように、重いマットは下へ、軽いスラグは上に浮かびます。
🏷️ 製錬ニュースでよく聞く「TC」とは?
ニュースなどで「TCが下がった」と耳にしたことはありませんか?
TC(Treatment Charge)とは、鉱山会社が製錬会社に支払う“処理費”のことです。
製錬会社の収益源となる重要な指標ですが、近年は急落しており、業界全体の大きな課題となっています。
※これについては別記事で詳しく解説いたします。
⚙️ ステップ④:転炉精錬|99%の「粗銅」を作る
次に、マットを「転炉(てんろ)」という設備に移し、酸素を吹き込みながら加熱します。
この工程で残っていた鉄や硫黄が燃え(酸化し)、不純物がどんどん除去されていきます。
最終的にできるのが**「粗銅(そどう)」。銅の純度はおよそ99%です。
表面が泡立つような見た目から、英語ではブリスターカッパー(Blister Copper)**と呼ばれています。
⚡ ステップ⑤:電解精製|ついに純度99.99%の完成!
⚡ 電気の力で“究極の純度”へ
最後の仕上げは電解精製(でんかいせいせい)。
電気の力を使って、99.99%の純銅を作り上げます。
- 粗銅の板を酸性液に浸ける
- 電気を流すと粗銅が溶ける
- 純粋な銅だけが反対側の板(陰極)に付着
- 不純物は底に沈む
約2〜3週間かけて、**純度99.99%の「電気銅」**が完成します。
💡 実はこの過程で、粗銅に含まれていた金・銀・パラジウムなどの貴金属も沈殿として回収されます。
副産物としての価値も高い工程です。
🌱 もう一つの方法:湿式製錬(しっしきせいれん)
ここまで紹介したのは「火を使う乾式製錬」ですが、もう一つの方法に**「湿式製錬」**があります。
湿式製錬の流れ
- 鉱石を硫酸などの薬品で溶かす
- 銅成分を液体から分離・抽出
- 電気分解で銅を取り出す
高温処理を必要としないため、環境負荷が小さいのが特徴です。
ただし世界の銅生産の約80%は、依然として乾式製錬によって行われています。
🧩 まとめ|銅は5回変身して“ピカピカ”に!
鉱石から電気銅になるまでの流れをもう一度おさらいしましょう👇
鉱石(銅1%)
↓ 選鉱で濃縮
濃縮鉱(銅30%)
↓ 製錬で溶かす
マット(銅70%)
↓ 転炉で精錬
粗銅(銅99%)
↓ 電気分解
電気銅(銅99.99%)✨
覚えておきたいポイント
- 銅は鉱石中にわずか1%しか含まれていない
- 5つのステップで約100倍に濃縮される
- 最後は電気の力で超高純度化
- 副産物として金や銀などの貴金属も得られる
普段使っている銅製品が、ここまでの工程を経て作られていると考えると、まさに「産業の血液」と呼ばれる理由がわかりますね。
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