こんにちは、非鉄金属ナビ運営事務局です。
「亜鉛?なにそれ?」と思った方、実はメッチャ身近な金属なんです。
- トタン屋根(鉄に亜鉛メッキ)
- 乾電池
- 硬貨(1円玉以外)
- 車のボディ(防錆メッキ)
鉄のサビ防止に欠かせない、縁の下の力持ちなんです。
今回は、亜鉛鉱石から純度99.99%の亜鉛ができるまでを解説します。
⚡ まず結論:亜鉛は2つの作り方がある
亜鉛の精錬には、大きく2つの方法があります。
①乾式製錬(蒸留法)
- 古くからある方法
- 熱で蒸発させて集める
- 世界の約10%
②湿式製錬(電解法)
- 現代の主流
- 電気分解で作る
- 世界の約90%
今は湿式製錬が主流なので、こちらをメインに解説します。
📊 亜鉛ができるまでの4ステップ
① 採掘 → 亜鉛鉱石(亜鉛3〜10%)
② 選鉱 → 亜鉛精鉱(亜鉛50〜60%)
③ 焙焼 → 酸化亜鉛(ZnO)
④ 電解精錬 → 亜鉛(純度99.99%)
順番に見ていきましょう。
⛏️ ステップ①:採掘|亜鉛鉱石の種類
主な亜鉛鉱石
閃亜鉛鉱(せんあえんこう):ZnS
- 最も一般的な亜鉛鉱石
- 硫黄と結合している
- 鉛や銀も一緒に含まれることが多い
特徴
- 亜鉛含有率:3〜10%
- 鉛と一緒に採れることが多い
- だから「亜鉛・鉛鉱山」が多い
主な産地
| 順位 | 産地 | 特徴 |
|---|---|---|
| 1位 | 中国 | 世界の約30%を産出 |
| 2位 | ペルー | 南米最大の産地 |
| 3位 | オーストラリア | 安定供給国 |
| 4位 | インド | 生産量増加中 |
| 5位 | アメリカ | アラスカなどに鉱山 |
💎 ステップ②:選鉱|浮遊選鉱で50%に濃縮
銅と同じで、浮遊選鉱法を使います。
流れ
- 鉱石を細かく砕く
- 水と薬剤を混ぜる
- 空気を入れて泡を作る
- 亜鉛鉱物が泡にくっついて浮く
- 浮いた泡を回収
これで亜鉛含有率50〜60%の精鉱ができます。
💡 鉛も一緒に採れる場合は、別々に分離して回収します。
🔥 ステップ③:焙焼|硫黄を追い出す
なんで焙焼が必要?
亜鉛精鉱(ZnS)には硫黄(S)がくっついています。
これを空気中で加熱して、硫黄を追い出すのが焙焼です。
化学式
2ZnS + 3O₂ → 2ZnO + 2SO₂
(亜鉛精鉱) (酸化亜鉛)(二酸化硫黄)
温度:約900〜1,000℃
できるもの
- 酸化亜鉛(ZnO):次の工程で使う
- 二酸化硫黄(SO₂):硫酸の原料にする
💡 出てきた二酸化硫黄は捨てずに、硫酸を作る原料にします。エコですね。
⚡ ステップ④:電解精錬|電気の力で亜鉛に
硫酸で溶かす
酸化亜鉛を硫酸で溶かします。
ZnO + H₂SO₄ → ZnSO₄ + H₂O
(酸化亜鉛)(硫酸)(硫酸亜鉛溶液)
この溶液を電気分解します。
電気分解の仕組み
設備
- 電解槽
- アルミ板(陰極:マイナス)
- 鉛板(陽極:プラス)
- 硫酸亜鉛溶液
プロセス
- 電気を流す
- 亜鉛イオン(Zn²⁺)が陰極に移動
- 電子をもらって金属亜鉛に変身
- Zn²⁺ + 2e⁻ → Zn - アルミ板の表面に亜鉛が析出
- 定期的に板ごと取り出す
- 亜鉛を剥がして溶解・鋳造
できるもの
- 純度99.99%以上の亜鉛
銅の電解精製と似ていますね。
🌡️ 乾式製錬(蒸留法)も簡単に紹介
昔ながらの方法も少しだけ紹介します。
流れ
- 焙焼で酸化亜鉛を作る(ここまで同じ)
- コークス(炭素)と混ぜて約1,200℃で加熱
- 亜鉛が気体になって蒸発(沸点906℃)
- 冷やして液体で回収
- さらに精製して純亜鉛に
特徴
- 設備がシンプル
- でも純度が低め(99.5%くらい)
- 今はあまり使われない
🔧 亜鉛の用途:実は超重要
メッキ(最大の用途)
亜鉛の用途の約50%がメッキです。
なぜ亜鉛メッキ?
- 鉄はサビるけど、亜鉛は鉄よりサビやすい
- 鉄に亜鉛を塗ると、亜鉛が身代わりにサビてくれる
- 結果、鉄が守られる
これを「犠牲防食」と言います。まさに亜鉛が犠牲になってくれるんです。
亜鉛メッキ製品
- トタン屋根
- ガードレール
- 鉄塔
- 車のボディ
- ネジ、釘
その他の用途
| 用途 | 割合 | 具体例 |
|---|---|---|
| ダイカスト | 約30% | 車の部品、家電の筐体、おもちゃ |
| 真鍮 | 約10% | 銅と亜鉛の合金、水道の蛇口、楽器など |
| 乾電池 | 約5% | マンガン乾電池の缶、亜鉛が反応して電気を作る |
✅ まとめ|亜鉛は鉄の守り神
覚えておきたいポイント
亜鉛鉱石(Zn 3〜10%)
↓ 選鉱
亜鉛精鉱(Zn 50〜60%)
↓ 焙焼(硫黄を除去)
酸化亜鉛(ZnO)
↓ 硫酸で溶解 → 電解精錬
亜鉛(純度99.99%)
🔍 亜鉛の特徴
- 現代は湿式製錬(電解法)が主流(世界の90%)
- 鉄のサビ防止に欠かせない
- 身代わりにサビて鉄を守る(犠牲防食)
- 用途の半分がメッキ
🆚 銅との違い
| 金属 | 精錬方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| 銅 | 転炉精錬→電解精製 | 最後の電解精製で純度を上げる |
| 亜鉛 | 焙焼→電解精錬 | 溶液から直接、電解精錬で金属にする |
地味だけど超重要な金属、それが亜鉛なんです。
非鉄金属業界では、亜鉛めっき鋼板のリサイクルが重要な位置を占めており、今後も安定した需要が見込まれています。
鉄のインフラを守る縁の下の力持ち——それが亜鉛の役割です。
次回は、鉛やニッケルなど、他の非鉄金属の精錬方法についても解説していきますので、引き続きよろしくお願いいたします。
