【緊急解説】日中関係の悪化は「スクラップ輸出」を止めるのか?現場が警戒すべき“見えない障壁”と3つの防衛策

こんにちは、非鉄金属ナビ運営事務局です。

連日のように報じられる「日中関係の緊張」。 半導体規制や台湾情勢を巡る外交的な応酬は、私たち非鉄金属業界にとっても他人事ではありません。

中国は日本の銅・アルミスクラップにとって最大の輸出先です。 現場の皆さまの中には、「もし中国と決定的に揉めて、明日からスクラップを買ってくれなくなったらどうしよう…」という漠然とした不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

今回は、政治リスクが高まる中で業界にどのような影響が出るのか、「中国の本音(経済)」と「現場のリスク(政治)」の両面から冷静に分析し、今とるべき対策を解説します。

結論:中国は日本のスクラップを「喉から手が出るほど欲しい」

まず、過度に恐れる必要がない点からお伝えします。 政治的な対立があったとしても、すぐに中国が日本からのスクラップ輸入を「全面禁止」にする可能性は極めて低いです。

理由はシンプルで、中国経済にとって日本の高品質なスクラップが必要不可欠だからです。

  • 脱炭素の切り札: 鉱石から精錬するよりも、スクラップをリサイクルする方がCO2排出量を圧倒的に減らせます。
  • 原料不足: 世界的な鉱山供給の停滞により、中国のメーカーも慢性的な原料不足に悩んでいます。

実際、中国政府は2025年から「再生銅・アルミ原料の輸入関税をゼロにする」という政策を打ち出しています。 これは「日本からもっと輸入したい」という、中国側の偽らざる本音の表れです。

警戒すべきは「法律」ではなく「現場の運用」

しかし、「法律で禁止されないから大丈夫」と考えるのは早計です。 過去の日中関係悪化時(レアアース問題や水産物禁輸など)に共通して見られたのは、公式な発表のない「サイレント規制(見えない障壁)」でした。

具体的には、以下のような「現場レベルでの嫌がらせ」とも取れる事象が発生するリスクがあります。

① 通関検査(CIQ)の異常な厳格化

普段ならスムーズに通る貨物が、港で止められるケースです。 「書類の些細な記載ミス」や「コンテナの奥まで全量検査する」といった対応により、通関に数週間〜1ヶ月以上の遅れが生じることがあります。

② 品質基準の恣意的な解釈

例えば、「不純物の混入率」について、これまで黙認されていた微細なプラスチック片などを顕微鏡レベルで指摘され、「環境基準不適合」としてシップバック(積み戻し)を命じられるリスクです。 これは輸出業者にとって、多額の輸送コストと損失を意味します。

今すぐできる3つの防衛策

こうした「チャイナリスク」から自社を守るために、今のうちから準備できることがあります。

対策1:契約条件(デマレージ条項)の防衛

中国側の通関事情で荷揚げが遅れた場合、その間の「デマレージ(コンテナ滞留料)」や「保管料」を誰が負担するのか。 契約書やメールのやり取りで、この点をあらかじめ明確にしておくことが重要です。 「通関リスクは買主(バイヤー)負担」と明記できればベストです。

対策2:品質管理(選別)の徹底

検査が厳格化されたときに一番の隙になるのは「品質」です。 「これくらいなら通るだろう」という甘えを捨て、「誰が見ても文句のつけようがないグレード」に仕上げて出荷することが、最大の自衛策になります。

対策3:「チャイナ・プラス・ワン」の販路確保

中国が高値で買ってくれるとしても、全量を中国に向けるのはリスク管理として危険です。 多少安くても、東南アジア(ベトナム、タイ、マレーシア)や、国内メーカーへの販売ルートを常に動かしておき、「いざという時の逃げ道」を確保しておきましょう。

まとめ:情報は武器になる

日中関係は政治マターであり、一企業の努力でコントロールできるものではありません。 しかし、「現場で何が起きうるか」を知り、契約や品質で備えることはできます。

「中国は買ってくれるはず」という過信を捨て、常に最新のニュースと港の状況にアンテナを張っておく。 非鉄金属ナビでは、今後もこうした「業界の天気図」の変化をいち早くお届けしていきます。