こんにちは、非鉄金属ナビ運営事務局です。
最近ニュースでも話題の「JX金属(5016)」。
ENEOSグループから独立して以来、その株価は春の底値(約650円)から3倍近くの2,000円台まで急上昇しています。
「なぜ、あの“銅の会社”がこんなに注目されているのか?」
今回は、ENEOS分社の背景からAI素材への転換、そして今後の株価展望まで、わかりやすく解説していきます。
ENEOSからの独立は“生まれ変わり”の第一歩
JX金属は、長年ENEOSホールディングス傘下で非鉄金属事業を担ってきました。
主力は銅精錬やリサイクル、そして電子材料など。
しかし、2025年3月19日に東証プライム市場へ新規上場(証券コード:5016)。
ENEOSグループからの独立を果たし、国内でも最大規模のIPOとして注目を集めました。
この分社は、単なる事業再編ではなく——
「資源依存の時代から、テクノロジーで稼ぐ会社へ」
という明確な方向転換を意味しています。
銅よりもAI?株価3倍の裏側にある“次世代素材”戦略
① 銅製錬の採算悪化と構造転換
世界的に銅鉱石の処理手数料(TC/RC)が下がり、製錬業の採算は悪化傾向。
JX金属はここで思い切って方針を転換。
「量ではなく質」
つまり、大量の電解銅をつくるよりも、少量でも高付加価値な素材をつくる方向に舵を切ったのです。
現在は、半導体向けの高純度銅やスパッタリングターゲット(薄膜形成用素材)が収益の柱となっています。
② InP(リン化インジウム)基板の増産が株価を押し上げた理由
AIの計算処理を担うデータセンターでは、サーバー間を高速でつなぐ光通信の需要が急増中。
JX金属が増産を進める**InP基板(リン化インジウム)**は、その光通信デバイスの“心臓部”にあたります。
電気信号を光に変えて伝送するため、省エネで高速通信が可能。
AIやクラウドの成長に欠かせない素材です。
つまり、JX金属は「AIの裏方として電力効率を支える存在」になりつつあります。
この将来性こそが、投資家の心を掴んでいます。
③ 都市鉱山(リサイクル)で新たな収益モデルを構築
JX金属は、廃電子基板やスクラップから貴金属や銅を回収するリサイクル事業にも注力。
「都市鉱山」と呼ばれるこの分野では、従来の鉱石採掘に比べて環境負荷が低く、コストも安定しています。
さらに、回収した金属を再び電子材料や半導体素材に再投入する“循環型モデル”を確立しつつあります。
「鉱山→精錬」から「都市鉱山→素材開発」へ
これまでの非鉄ビジネスは、海外鉱山で原料を掘り、製錬して売る「量産型」モデルでした。
でも、これからのJX金属は違います。
・海外鉱山の銅よりも、国内で回収できるスクラップ資源を再利用
・金属を売るよりも、それを**“AIや光通信に使える素材”**に変える
つまり、**「掘る会社」から「進化させる会社」**へ。
これが、「都市鉱山+高付加価値素材」モデルの意味です。
将来予測:JX金属の次のステージとは?
🔍 現在の市場評価
・2025年秋時点の株価:約2,000円前後(春の約650円から+200%以上)
・アナリスト平均目標株価:約1,500〜1,800円台(買い評価が優勢)
・営業利益予想も上方修正(AI関連素材が牽引)
投資家は、銅製錬よりもAI・光通信・リサイクルの成長を織り込み始めています。
🚀 強気シナリオ
AIデータセンター・6G通信・次世代パワー半導体が本格化すれば、
JX金属の高純度素材は世界的に需要が拡大。
この場合、株価は2,500円〜3,000円台も射程に入る可能性があります。
⚖ 中立シナリオ
銅精錬の逆風を吸収しながらも、
リサイクルや半導体材料事業で堅実に伸びる展開。
株価は1,500〜2,000円のレンジで安定的に推移する見通し。
⚠ リスク要因
・銅処理手数料(TC/RC)のさらなる低下
・AI投資サイクルの一時的停滞
・InP増産の技術的歩留まりリスク
これらが発生すれば、株価の短期調整もあり得ます。
ただし、中長期では「素材×循環×省エネ」という強いトレンドに支えられています。
まとめ:JX金属は“銅を超えた会社”へ
ENEOSから独立したことで、JX金属はより自由に、より技術志向の経営を進めています。
AI・光通信・リサイクルという3つの成長軸を押さえた今、
同社は「非鉄の次の主役」として注目を集める存在に。
これからの非鉄業界は、「掘る」よりも「進化させる」時代。
そしてJX金属は、その最前線を走っています。

