JX金属が70億円かけてリサイクルに本気出す理由|銅業界で今、何が起きてるの?

こんにちは、非鉄金属ナビ運営事務局です。

「銅はEVや半導体で需要が伸びているのに、製錬会社は儲からない——なぜ?」
そんな“ねじれ”が起きています。本記事では、その背景とJX金属の打ち手(リサイクル強化)を、できるだけわかりやすく解説します。


✅ はじめに:3行まとめ(先に全体像)

  • 問題:製錬会社の収益源であるTC/RC(処理・精製手数料)が激減
  • 解決策鉱石依存を下げ、Eスクラップ等のリサイクル原料を増やす
  • JXの動き2027年までに70億円投資し、前処理能力を大幅増強(約1.5倍)。

🏭 製錬会社の“儲けの仕組み”をサクッとおさらい

通常の製造業は「材料を買って→加工して→売って儲ける」ですが、銅製錬は少し違います。

  • 鉱山から**銅精鉱(コンセントレート)**を受け取る
  • 製錬・精製して**電気銅(99.99%)**にする
  • その**加工賃(TC/RC)**が主な収益源

銅精鉱(コンセントレート)=銅分20%-30%に濃縮したの粉上の鉱石
TC(Treatment Charge)=製錬(溶かす)手数料
RC(Refining Charge)=精製(純度を上げる)手数料


📉 いま起きていること:TC/RCが低すぎて採算割れ

  • 中国を中心に製錬能力が過剰に拡張 → 原料(精鉱)の奪い合い
  • 鉱山側が強気になり、TC/RCが歴史的低水準
  • 結果、**「処理しても儲からない」**状態が発生

一部地域では操業縮小・一時停止の検討も。製錬業にとって本質的な逆風です。


♻️ JX金属の選択:リサイクル原料を増やす

「鉱石だけに頼らない」ハイブリッド化へ

JX金属は、Eスクラップ(電子基板・スマホ・家電)等の“二次原料”比率を拡大
2027年までに約70億円を投資し、前処理能力を約1.5倍に強化します。

前処理とは?
解体・破砕→選別→有害物質の除去→粒度調整→**成分分析(仕様化)**までを行い、
炉に入れても安定して処理できる原料」に仕立てる工程のこと。

グリーン・ハイブリッド製錬とは

  • 鉱石(一次原料)+リサイクル(二次原料)を最適配合して処理
  • 環境負荷の低減(グリーン)と収益基盤の安定化を両立
  • 最終品質(電気銅99.99%)は変わらない——電解精製で同等品質へ

🧭 スクラップ業界への影響(簡潔版)

  • 受け入れ機会は増加:基板スクラップ・電線くず・工場発生屑など、需要拡大が見込まれる
  • 品質要件は厳格化
    • 含有Cu・貴金属、ハロゲン(塩素・臭素)、金属/樹脂比率などの仕様化
    • **異物・含有ばらつきの低減、トレーサビリティ(回収経路の証憑)**が必須に
  • 勝ち筋:選別・前処理・帳票の“セット”で安定品質のロットを出せる業者が強い
  • 価格形成:単純なキロ単価から、仕様別のプレミアム/ディスカウントへシフト

一言でいえば、**「量より質」**の時代。
**“とりあえず集める”から“仕様を作って供給する”**へ。


🔚 まとめ|覚えておきたい3つのポイント

  1. 製錬会社は今ピンチ:TC/RC低下で採算悪化。
  2. JXはリサイクルへ舵:2027年までに70億円投資、前処理能力約1.5倍
  3. スクラップは「仕様で勝負」:受け入れは増えるが、品質・証憑・安定供給が決め手。

日本のモノづくりを支える銅。その供給の持続可能性は、製錬×リサイクル×スクラップの新しい連携にかかっています。

大手メーカーが巨額投資するほど、リサイクル原料(スクラップ)の価値は高まっています。
あなたの工場や倉庫に眠っているスクラップも、日本の資源循環を支える重要なお宝です。
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