こんにちは、非鉄金属ナビ運営事務局です。
アルミ缶、サッシ、飛行機、スマホの筐体…。軽くて丈夫なアルミは、私たちの生活のあちこちで使われています。
でも、アルミを作るのに超大量の電気が必要って知ってましたか?
今回は、ボーキサイト(アルミの原料)から純度99.7%のアルミができるまでを、わかりやすく解説します。
⚡ まず結論:アルミ作りは電気の塊
細かい話の前に、アルミの特徴を知っておきましょう。
アルミ精錬の特徴
- 原料は「ボーキサイト」という赤茶色の鉱石
- めちゃくちゃ電気を食う(「電気の缶詰」と呼ばれる)
- だから電気代が安い国で作られる
- リサイクルすると電気が3%で済む!
では、詳しく見ていきましょう。
📊 アルミができるまでの3ステップ
アルミは大きく3つのステップで作られます。
① 採掘 → ボーキサイト(赤茶色の鉱石)
② バイヤー法 → アルミナ(白い粉)
③ 電解精錬 → アルミニウム(純度99.7%)
銅よりシンプルですね。順番に見ていきます。
⛏️ ステップ①:採掘|ボーキサイトって何?
ボーキサイトとは
ボーキサイトは、アルミの原料となる鉱石です。
特徴
- 赤茶色や茶褐色
- 見た目は普通の土っぽい
- アルミニウムが40〜60%含まれている
銅鉱石(銅1%)に比べると、めちゃくちゃ濃いですよね。
どこで採れるの?
| 順位 | 産地 | 特徴 |
|---|---|---|
| 1位 | オーストラリア | 世界の約30%を産出 |
| 2位 | 中国 | 国内消費が中心 |
| 3位 | ギニア | 高品質ボーキサイト |
| 4位 | ブラジル | アマゾン地域に鉱山 |
| 5位 | インド | 生産量増加中 |
基本的に熱帯・亜熱帯地域で採れます。日本では採れません。
🧪 ステップ②:バイヤー法|白い粉「アルミナ」を作る
バイヤー法って何?
ボーキサイトからアルミナ(酸化アルミニウム:Al₂O₃)という白い粉を取り出す方法です。
簡単な流れ
- ボーキサイトを砕く
- 高温・高圧の苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)で溶かす
- アルミだけが溶け出す
- 不純物(鉄、シリカなど)は「赤泥」として除去
- 冷やして結晶化
- 焼成(約1,000℃)して水分を飛ばす
- 真っ白な粉「アルミナ」の完成!
アルミナってどんなもの?
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 化学式 | Al₂O₃(酸化アルミニウム) |
| 外観 | 真っ白なサラサラの粉 |
| 状態 | まだ金属じゃない(酸化物) |
| 融点 | 約2,000℃と超高温 |
| 用途 | 電気分解してアルミにする |
💡 ポイント:ボーキサイト約4〜5トンから、アルミナ約2トンが作れます。
⚡ ステップ③:ホール・エルー法|電気でアルミを作る
なんで電気分解?
アルミナは融点が約2,000℃もあって、普通に溶かすのは大変です。
そこで、氷晶石(ひょうしょうせき)という物質を混ぜて融点を下げ(約1,000℃に)、電気分解します。
これをホール・エルー法(Hall-Héroult法)と言います。
電解精錬の仕組み
設備
- 巨大な「電解槽(でんかいそう)」
- 底に炭素の板(陰極)
- 上から炭素の棒(陽極)を差し込む
プロセス
- 電解槽にアルミナと氷晶石を入れる
- 約1,000℃で溶かす
- 大量の電気を流す(数万アンペア!)
- アルミナが分解される
- Al₂O₃ → Al(アルミ)+ O₂(酸素) - 液体のアルミが底に溜まる
- 定期的に取り出す
ポイント
- 液体アルミは重いので底に沈む
- 定期的にすくい取る
- 冷やして固める
- 純度99.7%のアルミの完成!
めちゃくちゃ電気を食う
アルミ1トン作るのに必要な電気は、一般家庭の約1年分!
だから、アルミは「電気の缶詰」と呼ばれています。
| 国・地域 | シェア | 電力源の特徴 |
|---|---|---|
| 中国 | 世界の約60% | 石炭火力が安い |
| インド | 増加中 | 石炭・水力 |
| ロシア | 安定供給 | 水力・天然ガス |
| カナダ | 伝統的産地 | 水力発電が豊富 |
電気代が安い国で作られるのが特徴です。
♻️ リサイクルが超重要な理由
新地金 vs リサイクル
| 製造方法 | 必要な電気エネルギー | 比率 |
|---|---|---|
| 新しくアルミを作る場合 | 100 | 100% |
| リサイクルでアルミを作る場合 | 3 | 3% |
そうなんです。リサイクルアルミは、新地金の3%の電気で済むんです。
だからアルミ缶はリサイクルされる
日本のアルミ缶リサイクル率は97%以上。
これは環境意識だけじゃなく、「リサイクルしないとコストで大損」という経済的理由もあるんです。
リサイクルの流れ
アルミ缶回収 → 溶解炉で溶かす(約700℃)→ 再びアルミ缶に
新しく作るより圧倒的に簡単&省エネなんです。
✅ まとめ|アルミは電気で作る金属
覚えておきたいポイント
ボーキサイト(鉱石)
↓ バイヤー法
アルミナ(白い粉)
↓ ホール・エルー法(電気分解)
アルミニウム(純度99.7%)
🔍 アルミの特徴
- 原料のボーキサイトはアルミ含有率が高い(40〜60%)
- 電気を大量に使う(電気の缶詰)
- だから電気代が安い国で作られる
- リサイクルすると電気が3%で済む
- だからアルミ缶のリサイクル率が超高い
🆚 銅との違い
| 金属 | 精錬方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| 銅 | 熱で溶かして精錬(乾式製錬) | 熱エネルギー中心 |
| アルミ | 電気で分解して精錬(電解精錬) | 電気エネルギー中心 |
アルミ缶を捨てずにリサイクルするのは、環境だけじゃなく経済的にも超重要なんですね。
非鉄金属業界では、このリサイクルアルミ(通称「二次合金」)の取り扱いが今後ますます重要になってきます。
環境負荷の低減と経済性の両立——それがアルミリサイクルの最大の魅力です。

