「雑線って買取価格がバラバラだけど、何で値段が決まっているの?」「雑線Sと雑線Dってどう違うの?」「被覆を剥いて銅にした方が高く売れるんじゃないの?」――そんな疑問をお持ちではないでしょうか。
雑線(被覆銅線)スクラップは、非鉄金属リサイクル市場のなかでも特に価格の振れ幅が大きい品目です。同じ「雑線」と一括りに見えても、内部の銅率(歩留まり)や被覆の構造、混入物の有無によって買取単価は最大で10倍以上の差がつきます。雑線Sクラスなら1,500円/kg超、家電コードの集合体なら数百円/kg、焼却線に至っては引き取り拒否、というのが実態です。
この記事では、雑線買取りの価格決定ロジックから、雑線S〜Dの具体的なグレード分類、キャブタイヤや自動車ハーネスなど特殊電線の検収基準、そして「剥いて売るか、雑線のまま売るか」の経済的損益分岐点まで、業界の検収現場で実際に使われている考え方に沿って整理してお伝えします。電気工事業者の皆様、解体業者の皆様、そして雑線を扱う調達担当者の方にとって、判断の物差しとなる一本に仕上げました。ぜひ最後までお付き合いください。
雑線(被覆銅線)買取りの価格はどう決まるのか
まずは、雑線買取りの価格がどのような数式・物差しで決まっているのかを押さえておきましょう。ここを理解しているかどうかで、業者との交渉力や、自社で抱える在庫の評価精度がまったく違ってきます。
価格決定の基本式
雑線スクラップの価値は、ざっくり言えば「LME銅相場 × 国内銅建値の係数 × 歩留まり − 処理コスト − 業者利益」という構造で決まります。業界の現場でよく使われる目安式は以下のようなものです。
買取単価 = (ピカ銅基準価格 × 歩留まり) − 皮処理費 − 加工費用
ここで言う「ピカ銅基準価格」とは、表面が酸化していない裸の太物銅線(業界用語ではピカ銅・一号銅・上小波などと呼ばれます)の単価のことです。雑線の単価は、このピカ銅価格を上限として、歩留まり分だけ目減りした金額が出発点になります。
つまり、ピカ銅の建値が日々動けば、雑線の価格もそれに連動して動く構造です。LME銅相場と為替が雑線買取り価格の「天井」を決めている、と理解していただくと分かりやすいでしょう。
歩留まり(銅率)とは何か
「歩留まり」というのは、被覆を含めた電線全体の重量に対して、内部の銅がどれだけの割合を占めているかを示す数値です。式で書くと次のようになります。
歩留まり (%) = 銅の重量 ÷ 被覆を含めた電線全体の重量 × 100
たとえば、1kgの電線を被覆ごと粉砕(ナゲット加工)して、銅が500g取れれば歩留まりは50%です。
ただし、実務上は現場で1kgずつ粉砕して計測するわけではありません。買取業者の検収担当(バイヤー)は、電線の品番・スケ数(断面積)・芯線本数といった情報から経験値で歩留まりを推定します。ここがバイヤーの腕の見せ所であり、業者間で査定額に差が出る最大の理由でもあります。
「ピカ銅」と「二号銅」を分ける芯線径
検収現場でもっとも重要な物差しが、被覆を剥いた後の芯線の太さです。一般的な分類は以下の通りです。
| 芯線の状態 | 分類 |
|---|---|
| 芯線径が太く、表面が酸化・メッキされていない光沢のある銅 | ピカ銅(一号銅) |
| 同等の太さでも黒ずみや酸化があるもの | ショート線(一号下) |
| 芯線径が細い、または錫メッキ・エナメル線 | 二号銅(込銅) |
ここで注意していただきたいのは、「太い」「細い」の境界線にあたる芯線径の数字が、業者によってバラバラだという事実です。1.3mm・1.6mm・2.6mmなど、業者ごとに基準が異なります。「業界標準は1.3mm」と一般化して説明する記事も見かけますが、実際の取引では危険な思い込みになりかねません。皆様が雑線を売却される際は、必ず取引先の検収基準票で境界値を確認されることをお勧めいたします。
雑線スクラップのグレード分類と買取価格の目安
ここからは、雑線のグレード体系を具体的に見ていきましょう。非鉄金属の取引現場では、内部の銅率・芯線の太さ・被覆構造に応じて、雑線は段階的にグレード分けされています。
なお、以下にお示しするグレード名称・歩留まり水準は、複数の問屋・精錬所の検収基準を踏まえた業界一般の目安です。買取業者ごとに呼称・歩留まり区分・価格水準は異なりますので、実際の取引前には必ず取引先の検収基準票をご確認ください。
雑線S・雑線A特・雑線A(上線クラス)
歩留まりが高く、高単価で取引される上位グレードです。
| グレード名 | 歩留まり目安 | 代表的な品目 | 検収のポイント |
|---|---|---|---|
| 雑線S(上線80%) | 80〜85%以上 | 太物のIV線・CVT線・CVQ線(60〜100SQ以上の一本線) | 芯線径1.3mm以上の太物単芯。メッキ・エナメル線は除外 |
| 雑線A特 | 75%前後 | 電力幹線、太物の電力ケーブル | 雑線Sよりやや被覆比率が高い太物 |
| 雑線A(上線60%) | 60〜65% | SV線、VVR線、CV線(14〜22SQの一本線、38SQ以上の3本線) | 芯線径1.3mm以上。被覆が硬質樹脂・金属の場合は減額 |
電気工事や電力設備の解体現場で発生する太物の幹線が、このクラスの中心になります。特に雑線Sは、ピカ銅価格に近い水準で取引される高品位グレードです。
ちなみに、大口の解体・電気工事現場で太物電線を扱う場合、長さから重量を概算できると現場判断が速くなります。スケ数(導体断面積)ごとの1mあたり概算重量を以下にまとめます。
| 規格(スケ数) | 1mあたり概算重量 | 検収上の特徴 |
|---|---|---|
| 100SQ | 約3.0 kg/m | 雑線S(歩留まり80%以上)の中心グレード |
| 200SQ | 約6.0 kg/m | 計算が容易で高価買取しやすい |
| 325SQ | 約10.0 kg/m | 太物幹線の代表。剥線処理の経済性を判断する基準サイズ |
| 600SQ以上 | 個別計量 | 歩留まり85%以上に達する超高品位電線も含む |
VA線(VVF・Fケーブル)・雑線B
住宅の屋内配線でおなじみの灰色の平型ケーブル、いわゆるVA線(VVFケーブル)も雑線買取りでは独立した品目として扱われます。
| グレード名 | 歩留まり目安 | 代表的な品目 | 検収のポイント |
|---|---|---|---|
| VA線(巻き/未使用) | 50%前後 | VVF・Fケーブルの未使用品(電工屋の残在庫など) | 工事残りの新品。巻きが崩れていないこと |
| 雑線B(VA線単体) | 42〜50% | 住宅解体由来のVVF・Fケーブル | 灰色被覆、内部に2〜3本の単線。プラグ・コネクタ付着は減額 |
電気工事店で発生する「工事残りの未使用VVF」は、巻きが崩れていなければ専用単価で買い取られることが多いです。一方、住宅解体由来の使用済みVVFは雑線Bとして検収されます。
雑線C・雑線D・自動車ハーネス
歩留まりが中〜低めのグレード群です。家電コードや自動車から発生する電線類はここに分類されます。
| グレード名 | 歩留まり目安 | 代表的な品目 | 検収のポイント |
|---|---|---|---|
| 自動車ハーネス | 40〜50% | 自動車・トラックのワイヤーハーネス | 細いより線の集合体。ヒューズボックス・メーター等のダストは要除去 |
| 雑線C(中線) | 40〜49% | 通信線、一般高圧線、CV線、キャブタイヤ | 被覆比率が高く芯線が細い電線全般 |
| 雑線D(家電線) | 20〜35% | 家電製品の電源コード、弱電線 | プラグ・ACアダプタ・タップなどの付着物はダスト扱い |
家電製品の電源コードを束で持ち込まれる方も多いですが、これは雑線Dとして比較的低単価で査定されるグレードです。プラグやACアダプタが付着したまま持ち込むと、その分の重量は「ダスト」として控除されます。
その他(雑線込鉄・同軸線)
特殊な構造を持つ電線は、独立した単価で別建て検収されます。
| グレード名 | 歩留まり目安 | 代表的な品目 | 検収のポイント |
|---|---|---|---|
| 雑線込鉄 | 個別計量 | 鋼管内に通された雑線、鉄巻き線 | 非鉄と鉄屑の複合材として別建て検収 |
| 同軸線 | 10〜30%未満 | アンテナ線、テレビ配線 | 中心導体が細く、編組シールド含むため銅率が低い |
特殊電線の取り扱いと減額・除外の根拠
雑線スクラップの世界には、「見た目の太さや重量で一律査定すると損をする、あるいは取引でトラブルになる」電線がいくつか存在します。これらは個別の検収基準が設けられており、知らずに持ち込むと現場で揉める典型ポイントになります。
キャブタイヤケーブル(VCT・VCTF・PNCT・RNCT等)
工場・建設現場・溶接機の電源ケーブルとして大量に発生するキャブタイヤは、外見の太さに反して歩留まりが40〜50%程度に留まる特徴があります。
その理由は単純です。外装ゴム・CR被覆が厚く樹脂重量比率が高いこと、そして内部導体が極細のより線の束で芯線径基準では「ピカ銅」相当にならないこと、この2点に尽きます。
よく「より線だから機械処理でロスが出る」という説明を見かけますが、これは正確ではありません。ナゲット加工自体は単線でもより線でも問題なく分離できます。ロスではなく、構造的に被覆が重いから歩留まりが低い、というのが正しい理解です。
そのため、キャブタイヤは外径がいかに太くても雑線S・雑線Aには分類されず、雑線Cまたは個別減額となります。「太いから雑線Aで売れるはず」と思い込んで持ち込むと、現場で査定額に納得できず揉めるパターンが非常に多い品目です。
自動車ワイヤーハーネス
自動車・トラック由来のワイヤーハーネスは、極細のより線の集合体で歩留まり40〜50%程度です。買取単価はおおむね雑線Aと雑線Cの中間に位置します。
検収上の注意点は、ダストの除去です。小型ソケットやカプラー程度の付着は許容されるケースが多いものの、ヒューズボックス・メーター・ECU筐体などの重量物は事前に外しておく必要があります。これらを付けたまま持ち込むと、重量比でハーネス本体が減額されるか、最悪の場合は引き取り拒否となるケースもあります。
なお、パチンコ台などの遊技機用ハーネスは自動車ハーネスとは別品目として扱われるのが一般的です。銅率がさらに低く、別単価が設定されていることが多いので、混ぜずに分けて持ち込むのが鉄則です。
ソーラーケーブル(PVケーブル)
太陽光発電設備の撤去案件で発生するソーラーケーブルは、屋外耐候性のために架橋ポリエチレン等の特殊被覆が使われています。一般雑線とは被覆構造が異なるため、専用価格・特約が設定されるケースが多いのが特徴です。
太陽光設備の撤去では1案件で1トン超の大量発生になることも珍しくありません。大口で発生する見込みがあるなら、複数業者に事前見積もりを取ることをお勧めいたします。
鎧装ケーブル(あじろ線・船舶用ケーブル等)
外装樹脂の外側に金属で鎧装された電線は、通常の剥線機・破砕機に深刻な損傷を与えるため、検収では完全に別単価扱いとなります。
鎧装の構造には複数のバリエーションがあります。鋼帯(スチールテープ)鎧装、鋼線編組鎧装、鉛シース被覆、船舶用の金鎧装ケーブル(MPYCなど)といったものです。「あじろ線イコール鉄の網目」と単純化されることが多いですが、実際は上記のように構造に幅があります。いずれにせよ、鉄や鉛の分離工程が必要になるため、通常の被覆銅線としては検収されず、ペナルティ単価が適用されるのが原則です。
なお、業界で「ダルマ線」と呼ばれる電線は、架空通信線・架空電力線に用いられる、電線本体と架線吊り下げ用の鋼線(メッセンジャーワイヤー)が一体化したダルマ型断面のケーブルです。解体・分離が著しく困難で、多くの場合は事前相談と別単価設定が必要になります。
焼却線は買取拒否が原則
被覆を野焼きや焼却炉で燃やして中の銅だけを取り出した「焼却線」は、現代の非鉄金属市場では事実上の流通停止品です。
理由は3つあります。1つ目は、表面の銅が高熱で酸化して純度が大幅に低下すること。2つ目は、ダイオキシン類の発生など廃棄物処理法・大気汚染防止法に抵触する可能性があること。3つ目は、多くの業者がコンプライアンス上、買取拒否または廃棄物同等の最低単価としているためです。
「銅価格が高いから自分で焼いて売れば儲かる」というのは過去の話で、現在は法令面・市場面の両方から推奨できる選択肢ではありません。皆様の現場で焼却処理を検討されている場合は、必ず思いとどまっていただければと思います。
雑線買取りで「高く売る」ための実務ポイント
最後に、グレード判定の知識とは別に、運用面で買取価格を守る・上げるためのポイントを3つだけご紹介します。地味ですが、長年この業界に関わってきた我々から見て、確実に効くポイントばかりです。
雨ざらしを避ける
電線を雨水・湿気にさらすと、被覆内部の銅が酸化して黒ずみます。屋外保管で1〜2ヶ月放置すれば、「ピカ銅」相当だった電線がショート線・二号銅へ格下げになることも珍しくありません。
屋内保管、もしくは少なくともブルーシートでの完全カバーを徹底するだけで、価格を守れます。これは追加コストがほぼゼロでできる、もっともコストパフォーマンスの高い対策と言ってよいでしょう。
一次選別を現場で行う
家電線(雑線D)、キャブタイヤ(雑線C)、IV線(雑線S)が混ざった状態で持ち込むと、全体が低いグレードの価格で査定されるリスクがあります。これを避けるためには、最低限の一次選別を現場で行っておくことが効果的です。
具体的には、太物一本線(雑線S候補)、VVF・VA線(雑線B候補)、家電線・コード類(雑線D候補)、キャブタイヤ・ゴム被覆(雑線C候補)、この4分類に分けておくだけでトータルの受取額が変わってきます。手間に対してのリターンが大きい工程です。
異物・ダストを除去する
電線スクラップに混ざりがちな「ダスト」、たとえばヒューズボックス、コネクタ筐体、プラグ、鉄製の支持金具などは、事前に外しておくのが基本です。これを怠ると、全体重量から「ダスト比率」を引かれる形で査定が下がります。
特に住宅解体現場や工場解体現場では、電線と金物が混在した状態で発生しがちです。可能な範囲で発生現場で仕分けしておくと、最終的な手取り額が変わってきます。
よくある質問(FAQ)
雑線買取りに関して、皆様から寄せられることの多い疑問にお答えします。
Q. 雑線の買取価格は毎日変動しますか?
A. はい、雑線買取り価格の天井はLME銅相場と国内銅建値で決まります。これらの相場は日々変動するため、雑線買取単価も日々動きます。大口の取引を予定されている場合は、その日のLME銅相場と為替を確認したうえで、複数業者から見積もりを取ることをお勧めいたします。
Q. 個人で雑線を業者に持ち込んでも買い取ってもらえますか?
A. 業者にもよりますが、多くの非鉄金属業者では個人からの持ち込みも受け付けています。ただし、2025年の金属スクラップ規制強化(古物営業法・特定金属類取扱業者制度の運用厳格化)により、本人確認書類の提示が求められるケースが増えています。事前に業者へ電話で確認されると安心です。
Q. 焼却線は本当にどこも買い取ってくれませんか?
A. 一部の業者は最低単価で引き取るケースもありますが、ほぼ廃棄物処理費用相当の価格になります。さらに焼却行為自体が廃棄物処理法・大気汚染防止法に抵触するリスクが高く、近年は警察・自治体の取り締まりも強化されています。焼かずに雑線のまま売却するのが、価格面でも法令遵守面でも正解です。
Q. ソーラーケーブルを大量に発生させる予定です。どこに相談すべきですか?
A. ソーラーケーブルは特殊被覆のため、一般雑線とは別単価で取引されます。1案件1トン超の大量発生が見込まれる場合は、太陽光設備の解体実績がある非鉄金属業者複数社に事前見積もりを取り、引取条件(運搬費負担・支払サイト等)を含めて比較されることをお勧めいたします。
Q. 雑線の価格が一番高くなるタイミングはありますか?
A. 銅相場が高値圏にあるときが、雑線買取り価格も高くなるタイミングです。LME銅価格と為替(円安方向)の組み合わせで国内建値が決まりますので、両方を見ながら売却タイミングを判断されると有利です。我々非鉄金属ナビでも、銅をはじめとするLME6金属の相場情報を日々更新していますので、ぜひご活用ください。
まとめ
本記事では、雑線(被覆銅線)スクラップの買取価格がどのように決まるのか、グレード分類の全体像、特殊電線の扱い、剥線処理の損益分岐点、そして高く売るための実務ポイントまでを業界実務の視点で解説してまいりました。
要点を改めて整理いたします。
雑線買取り価格は、LME銅相場と国内銅建値を天井として、歩留まり・処理コスト・業者利益を差し引いた構造で決まります。グレードは雑線S(歩留まり80%以上)から雑線D(歩留まり20〜35%)まで段階的に分かれており、芯線径と被覆構造で評価が大きく変わります。キャブタイヤ・自動車ハーネス・ソーラーケーブル・鎧装ケーブルといった特殊電線は別単価扱いで、特に焼却線は買取拒否が原則です。剥線処理は産廃処分費まで含めると、太物単芯の大量ロット以外では経済合理性が成り立ちません。価格を守るには、雨ざらし回避、一次選別、ダスト除去という運用面の地味な工夫が確実に効きます。
雑線買取りは、知識と判断力がそのまま手取り額に反映される世界です。「自社で発生している電線が、本当に正しいグレードで査定されているか」を疑う目を持っていただくだけで、長期的には大きな差につながります。
我々非鉄金属ナビ運営事務局では、雑線買取りに直結する銅相場をはじめ、LME6金属の最新相場情報やリサイクル業界の動向を日々発信しています。「自社の雑線をもっと有利な条件で売却したい」「銅相場の今後の見通しを知っておきたい」という方は、ぜひ非鉄金属ナビをご活用ください。皆様のリサイクル事業のお役に立てれば幸いです。

