2026年3月 非鉄金属相場まとめ|アルミ急騰・イラン戦争・錫急落・銅調整の背景を解説

こんにちは。非鉄金属ナビ運営事務局です。

「2026年3月の非鉄金属相場、結局どう動いたの?」――そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

3月は、イランと米国・イスラエルの軍事衝突という地政学リスクが一気に表面化し、中東の大型アルミ製錬所が相次いで操業を停止・被弾するという前例のない事態が起きました。一方で、錫は「世界最大の鉱山が再開するらしい」というニュース一本で27%もの急落を演じ、銅は1月の史上最高値からの調整が本格化しました。

この記事では、非鉄金属ナビが独自に集計した日次LMEデータをもとに、6金属それぞれの値動きと、その背景にある理由をできるだけわかりやすい言葉でお伝えします。相場の数字を追うだけでなく、「なぜそうなったのか」まで理解したい方に、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。


3月の相場を動かした「3つの大きな出来事」

個別の金属の話に入る前に、3月の相場全体に共通して影響した背景を3点整理します。この3つを頭に入れておくと、各金属の値動きが格段に理解しやすくなります。

イラン戦争の激化とホルムズ海峡の封鎖

ホルムズ海峡とは、ペルシャ湾の出口にある幅約50kmの「海の通り道」です。世界の原油の約2割、アルミの原料など多くの工業原材料が、この海峡を経由して世界中に届けられています。

2026年3月、米国・イスラエルとイランの軍事衝突によってこの海峡が事実上封鎖され、船が通れない状況になりました。中東の金属製錬所(金属を溶かして製品にする工場)は、原料も燃料もこの海峡経由で受け取っています。「工場を動かしたくても、材料が届かない」という事態が中東各地で連鎖的に起き、特にアルミニウムの相場を大きく揺さぶりました。

アメリカの関税問題の一部法的決着

2026年2月、アメリカの最高裁判所が「大統領が一方的に課した追加関税の一部は違法」という判決を下しました。これにより市場の不安感はやや和らいだものの、銅などへの品目別の関税は引き続き残っており、「次の関税はいつ、どれくらいの規模か」という読み合いが続いています。特に銅については2026年6月をめどにアメリカ商務省が大統領へ報告を行う予定で、その動向が今後の相場を左右する最重要材料の一つです。

3月19日の全品目一斉急落

非鉄金属ナビのデータが示すとおり、3月19日(木)は全6金属が同じ日に月内最安値を揃って記録した特異な日でした。

銅は前日比▲677ドル、錫は▲4,225ドルという大幅安。為替も同日に1ドル=160.88円と月内最高を付けており、「コモディティを売ってドルに逃げる」というリスクオフの典型的なパターンが鮮明に出た日でした。イランとの地政学リスクが世界経済の先行きへの不安を一気に高め、年初来の高値圏で積み上がっていた「値上がりに賭けた買いポジション」の解消売りが重なったものと見られます。


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3月のLME日次データ一覧

非鉄金属ナビが集計した、3月2日から3月27日までの20営業日分のLMEデータです。月初の高値・3月19日の一斉底打ち・月末の小反発という3段階の動きが、数字でくっきりと見えます。

日付亜鉛アルミニッケルTTS(円)
3月2日13,2303,3541,9343,22617,33557,200157.54
3月3日12,8203,2871,9023,26917,00049,700158.50
3月4日12,9603,2821,9033,37817,39551,425158.69
3月5日12,8413,2671,9043,29817,11049,850157.60
3月6日12,8083,2381,9003,38517,20050,400158.45
3月9日12,7503,3201,8943,40617,29048,275159.71
3月10日12,9203,3341,8953,40217,31050,005158.73
3月11日12,8503,2681,8863,46717,22049,900159.23
3月12日12,8963,2641,8943,51617,50049,725160.09
3月13日12,7583,2701,8803,52017,34047,950160.26
3月16日12,7593,2401,8543,44017,12048,000160.43
3月17日12,6773,1891,8863,42617,20046,805160.37
3月18日12,5033,1241,8803,40016,99046,295160.19
3月19日11,8263,0101,8283,20016,29041,700160.88
3月20日12,0213,0651,8613,32916,77043,700160.52
3月23日11,8913,0401,8613,25116,90043,425160.52
3月24日11,8783,0371,8503,24216,83043,750159.47
3月25日12,1353,0471,8823,29417,32045,525159.66
3月26日12,1083,0771,8503,33217,02044,400160.52
3月27日12,0463,0751,8553,29217,01044,850160.60

単位:米ドル/トン(TTS は円)。出典:非鉄金属ナビ相場情報ページ


月間サマリー:各金属の高値・安値・平均と前月比

金属月間平均月内高値(日付)月内安値(日付)前月比
$12,534$13,230(3/2)$11,826(3/19)▲3.3%
亜鉛$3,189$3,354(3/2)$3,010(3/19)▲4.0%
$1,880$1,934(3/2)$1,828(3/19)▲1.9%
アルミ$3,354$3,520(3/13)$3,200(3/19)+9.4%
ニッケル$17,108$17,500(3/12)$16,290(3/19)▲0.1%
$47,644$57,200(3/2)$41,700(3/19)▲2.1%

アルミニウムだけが唯一の前月比プラス。錫は月間の値幅が約$15,500(高値比▲27%)と、6金属の中で圧倒的に激しい動きとなりました。


各金属の値動きと背景:6金属を個別に深掘り

ここからは、各金属がなぜそのような動きになったのかを、一つひとつ丁寧に解説します。

銅:「年初の買いすぎ」の反動が本格化した月

銅は2026年1月末に1トンあたり約$14,528という史上最高値を記録しました。ところが3月の月間平均は$12,534と、そこから約14%低い水準です。なぜこれほど下がったのでしょうか。

実は、年初の急騰の多くは「アメリカが銅に高い関税をかけるかもしれない」という見通しを受けた「駆け込み輸入ブーム」が原因でした。関税が実施される前にアメリカへ銅を大量に運び込もうという動きが世界中で起き、人工的な需要増が相場を押し上げていたのです。このブームが一段落すると、買いすぎた反動で価格が下がるのは自然な流れです。

市場分析会社StoneXのアナリストは「銅の価格は急速に上がりすぎており、関税の実態や世界経済の現実から乖離していた。持続不可能だった」と述べています。加えて、欧米の投資家が「銅は上がる」と見て大量の買いポジションを積み上げていた一方、中国のトレーダーたちは「銅は下がる」と見て反対方向に大きく賭けていました。東西で真逆の見方がぶつかっていた状態が崩れたとき、売りが加速したのです。

今後は、アメリカ商務省が2026年6月をめどに精錬銅への関税について大統領に提言する予定です。「関税が決まる前にもう一度買いだめしよう」という動きが再来するかどうかが、4月以降の銅相場の最大の注目点です。

アルミニウム:イラン戦争が「工場が動かない」危機を連鎖させた

3月に6金属で唯一の前月比プラス(+9.4%)を達成し、4年ぶりの高値圏に達したアルミニウム。その背景は、イラン戦争による中東の製錬所への段階的なダメージです。

3月3日、カタールの大型製錬所「カタルム」が天然ガスの供給停止を受けて生産を段階的に停止し始めました。続いて3月15日、年間生産能力162万トンを誇る「世界最大の製錬所」として知られるバーレーンの「アルバ(Alba)」が、全生産能力の19%にあたるラインを止めると発表。アルバはホルムズ海峡の封鎖による原料・輸送の混乱を理由に、取引先への納品も「不可抗力(フォースマジュール)」として免責を宣言しました。

3月13日にアルミが月内最高値$3,520をつけたのは、こうした中東の製錬所問題が市場に認識されてきたタイミングと重なっています。

そして最大の転換点が訪れたのは月末です。3月28日(土)、イランがUAEのアブダビにあるEGA(エミレーツ・グローバル・アルミニウム)の工場と、バーレーンのアルバの工場に対してドローンとミサイル攻撃を実施しました。EGAは「施設に甚大な損傷を受けた」と発表。翌3月30日(月)の取引開始後、アルミの先物価格は最大6%急騰し、アルコア株は13%高、センチュリー・アルミニウム株は20%超高を記録しました。

中東は世界のアルミ生産量の約9%を担っています。問題はもともとLMEの在庫が歴史的な低水準にあり、「緩衝材がない状態での攻撃」だったことです。マッコーリー証券は「損傷が長期化すれば世界市場全体が供給不足に転落しかねない」と警告しており、4月以降の工場復旧の進捗が最大の焦点です。

錫:「世界最大の鉱山が再開か」の報道一本で27%急落

月初$57,200から3月19日の$41,700まで、わずか3週間で約27%下落という6金属最大の乱高下を記録した錫。この激しい値動きには、明確な「買いすぎ→ニュース一本→急落」という流れがあります。

錫は「はんだ」の主原料として、スマートフォンや半導体の回路基板を作るのに欠かせない金属です。AI・データセンターの建設ラッシュでこの需要が急増する一方、世界の錫輸出の約40%を担うミャンマーとインドネシアの両国で相次いで供給制限が起きており、「錫が足りなくなる」という不安が年初から価格を大きく押し上げていました。

崩壊のきっかけとなったのは、2026年2月27日に出たミャンマーからのニュースです。ミャンマーの自治区であるワ州(世界最大規模の錫鉱山「マンマウ」がある地域)の当局が、鉱山の排水作業に関する通知を発表しました。市場はこれを「長期休止していた世界最大の錫鉱山が本格再開する」という強いシグナルと受け止め、それまで積み上がっていた「希少性プレミアム」が一気に剥落しました。同時期にLMEの錫在庫が積み上がっていたことも重なり、わずか5営業日で約$10,000という急落が起きました。さらに、タカ派として知られる新FRB議長の就任発表でドルが急騰し、コモディティ全般への下押し圧力も加わりました。

月末の$44,850への持ち直しは「ミャンマーの再開はまだ確定ではない」「インドネシアの採掘許可問題も続いている」という認識が戻ってきたことによる底打ちです。錫は市場規模が小さい金属であるため、ニュース一本でこれほどの振れ幅が生まれやすい。それが3月の錫相場を象徴しています。


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ニッケル:「作りすぎ」が上値を封じ続けた静かな相場

ニッケルは前月比ほぼ横ばい(▲0.1%)と、方向感のつかみにくい動きが続きました。

電気自動車(EV)のバッテリー材料として注目されたニッケルですが、インドネシアやフィリピンでの生産拡大が需要の伸びを大きく上回っており、世界的な「作りすぎ」状態が続いています。大きく上げる材料も、大きく下げる固有の材料もなく、3月19日の一斉急落後は$17,000前後に戻るという値動きの小さな展開でした。

イラン戦争については間接的な影響もあります。石油精製の副産物である硫黄は、ニッケルの精錬に使う硫酸の原料です。中東の混乱でこの硫黄の供給が滞れば精錬コストが上がるという懸念が、引き続き市場の底辺に流れています。

亜鉛:「欧米は足りない、中国は余っている」の綱引き

月間で約▲4.0%の緩やかな下落となった亜鉛ですが、この動きを複雑にしているのが地域によってまったく需給状況が異なるという構造問題です。

ヨーロッパでは製錬所のコスト高などにより在庫が極めて低い水準にある一方、中国では生産余剰が続いています。「欧米は引き締まっているが、中国はダブついている」という二重構造が、価格の大きな上昇も急落もしにくい中途半端な動きを生み出しています。

亜鉛は鉄板をサビから守る「亜鉛めっき」の主原料であり、自動車や建設資材に幅広く使われます。米国の関税政策による製造業・建設業の冷え込みへの懸念が引き続き重しになっており、需要面での明るい材料が出てきにくい状況です。

鉛:6金属で最も「静かな月」

鉛は月間の値幅が$106と6金属で最も小さく、$1,828〜$1,934のレンジに収まった安定した動きでした。

鉛の主な用途は自動車の鉛蓄電池です。電気自動車が普及しても、ガソリン車の補助バッテリーとして当面は需要が維持されます。需要と供給がほぼ釣り合っており、イラン戦争を含む外部要因でも価格を大きく動かすほどの固有材料に欠ける状態が続いています。6金属の中で最も「実需に忠実な」動きをしていると言えるでしょう。


まとめ

2026年3月のLME6金属相場を振り返ると、一言でいえば「イラン戦争がアルミを爆騰させ、ミャンマー報道が錫を急落させ、銅は記録的高値の反動で一段落した月」でした。

金属月間動向主な理由(ひと言で)
やや下落(▲3.3%)年初の急騰の反動・投機筋の売り
アルミ上昇(+9.4%)イラン戦争で中東工場が次々停止・被弾
急落後に底打ち(▲2.1%)ミャンマー鉱山再開報道で売りが殺到
ニッケルほぼ横ばい(▲0.1%)世界的な生産過剰状態が継続
亜鉛緩やかに下落(▲4.0%)欧米タイト vs. 中国余剰の綱引き
ほぼ動かず(▲1.9%)需給均衡・固有の変動材料に乏しい

4月以降の注目ポイントを3点に絞ると、まずアルミニウムは、攻撃を受けたEGAとアルバの工場の修復にどれくらいかかるかが焦点です。製錬所はいったん止めると再稼働にも時間がかかるため、供給不足が長引くほど価格上昇圧力が高まります。次に銅は、アメリカ商務省が6月をめどに精錬銅への関税を大統領に提言する予定であり、「関税前の駆け込み輸入」の再来があるかどうかが相場を左右します。そして錫については、ミャンマーのマンマウ鉱山が実際に生産再開するか、インドネシアの採掘許可がスムーズに下りるかが価格の方向性を決める最大の材料です。

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