こんにちは。非鉄金属ナビ運営事務局です。
NSP 500円/kg、LME 3,500ドル/トン超――。 2026年3月、アルミ相場が4年ぶりの高値を叩き出しました。NSP(アルミ地金価格)は過去最高値タイの500円/kg。LMEは3,000ドルの壁を突き抜け、3月12日には3,500ドル/トンを突破しています。
背景にあるのは「二重の天井」です。世界生産の6割を占める中国が、年間4,500万トンの生産上限に物理的に到達。どれだけ価格が上がっても、もう増産できません。そこに中東紛争が直撃し、世界供給の約1割を担うGCC諸国の精錬所が相次いで操業停止に追い込まれました。カタールは稼働を止め、バーレーンのアルバはフォースマジュールを宣言しています。
「価格が上がれば中国が増産して元に戻る」。これまでアルミ市場で繰り返されてきた常識が、2026年に壊れました。
本記事では、Goldman Sachs・Fastmarkets・丸紅・INGの主要4機関の予測コンセンサスと、当サイト独自の一点予想を提示しながら、この先の相場シナリオと実務で取るべきアクションを解説します。
アルミを含む6金属の予測を網羅した「LME6金属予測レポート 2026年版(PDF)」も無料公開中です。本記事はそのアルミセクションに、3月の中東情勢の急展開を加筆したものです。
この記事で分かること:
- 2026年3月時点のアルミ価格の現状(LME・NSP・対日プレミアム)
- アルミが値上がりしている4つの理由
- 主要4機関の2026年アルミ価格予測コンセンサス
- 当サイト独自の「一点予想」と上半期・下半期のシナリオ
- 調達担当者・スクラップ業者が今やるべきこと
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2026年3月時点のアルミ価格はどうなっている?
まず、現在のアルミ相場の全体像を押さえましょう。
LMEアルミ価格
2026年2月のLMEアルミ月間平均価格は約3,065ドル/トン(円換算:約476円/kg)でした。3月に入ってからは中東情勢の急激な悪化を受けて上昇が加速し、3月12日には3,500ドル/トンを突破。約4年ぶりの高値を記録しています。
2025年前半は2,300〜2,600ドル/トン程度で推移していましたが、中国の輸出税還付停止(2024年末)、米国のアルミ関税引き上げ観測、そして中国の生産上限到達が重なり、年後半から上昇トレンドが鮮明化。2026年に入ってからは3,000ドルを突破し、完全に別のレンジに入りました。
NSP(アルミ地金価格)の推移
NSP(New Standard Price)は3ヶ月ごとに改定される国内のアルミ製品価格指標です。直近の推移は以下の通りです。
| 期間 | NSP(円/kg) | 前期比 |
|---|---|---|
| 2025年1〜3月 | 430 | – |
| 2025年4〜6月 | 500 | +70円 |
| 2025年7〜9月 | 460 | ▲40円 |
| 2025年10〜12月 | 470 | +10円 |
| 2026年1〜3月 | 500 | +30円 |
2026年1〜3月期のNSPは500円/kgで、2025年4〜6月期に並ぶ過去最高値タイとなっています。算出根拠は2025年9〜11月の日経平均地金の3ヶ月平均(467.9円+498.9円+510.9円)÷3=492.6円を四捨五入して490円、エクストラ+10円で500円です。
次期NSP(2026年4〜6月期)はさらに上昇する可能性が高いです。2025年12月〜2026年2月の地金平均が500円/kgを大きく超えて推移しているためです。
対日プレミアム(MJP)
LME価格に上乗せされる対日プレミアム(MJP:CIFベース)も上昇基調にあります。2025年1〜3月期には一部228ドル/トンで決着しており、コロナ前の水準と比べて約2倍の高水準が続いています。
丸紅の分析では、2026年は一時200ドル超えも視野に入るとされています。LME価格だけを見ていると実際の仕入れコストを過小評価してしまうため、プレミアム動向にも要注意です。
アルミ価格がここまで値上がりした4つの理由
アルミの高騰は、複数の構造的・短期的要因が重なった結果です。それぞれの理由を解説します。
理由①:中国の生産能力が「天井」に到達
アルミ高騰の最大の構造的要因は、世界生産の約60%を占める中国が物理的な「増産の限界」に達したことです。
中国政府は環境対策として、国内のアルミ精錬能力に年間4,500万トンの上限を厳格に設定しています。2025年末にこの上限に実生産が到達したため、2026年はどんなに価格が上がっても中国からの増産ができない状態に入りました。
これまでアルミは「価格が上がれば中国が増産して供給過剰に戻る」というパターンを繰り返してきました。しかし、生産上限に到達した今、そのセーフティネットが機能しなくなっています。アルミが「需要は伸びるが供給は増えにくい金属」に構造的に変わった、歴史的な転換点と言えます。
理由②:中東紛争によるGCC精錬所の操業停止(2026年3月〜)
2026年3月に入り、米国・イスラエルとイランの軍事衝突が激化。イランがGCC諸国全体を攻撃対象としたことで、中東のアルミ生産に直接的な打撃が生じています。
中東は世界のアルミ生産能力の約9〜10%を占める重要な生産拠点です。今回の紛争で具体的に起きていることは以下の通りです。
- カタール:ノルスク・ハイドロとの合弁アルミ精錬事業が操業停止
- バーレーン:世界有数の精錬所「アルバ(Alba)」がフォースマジュール(不可抗力)を宣言
- UAE:主要施設がミサイル攻撃やエネルギーインフラ攻撃による電力中断の脅威下に
- ホルムズ海峡:イランが貨物船を攻撃し、倉庫と顧客が物理的に隔離される事態に
これは単なる「リスク」ではなく、世界供給の約1割が実際に止まりかけているという、極めて深刻な状況です。LMEおよびCOMEXの在庫はすでに記録的な低水準に近づいており、ここに中東からの供給途絶が重なったことで、価格は一気に4年ぶりの高値まで跳ね上がりました。
理由③:LME・COMEX在庫の記録的低水準
世界のアルミ在庫は歴史的な低水準にあります。中国の生産上限到達と中東の供給不安が重なる中、緩衝材となるはずの在庫が薄い状態です。
在庫が少ないということは、突発的な供給トラブル(鉱山事故、電力不足、地政学リスクなど)が起きた際に価格が急騰しやすいことを意味します。今回の中東紛争での急騰は、まさにこの「在庫の薄さ」が増幅装置として働いた結果です。
理由④:構造的な需要の拡大
アルミは「軽さ」と「加工しやすさ」から、以下の分野で構造的な需要拡大が進んでいます。
- 自動車の軽量化:EVでは車体軽量化のためにアルミの使用量が増加傾向
- 再生可能エネルギー:太陽光パネルのフレーム、送電網の電線(銅代替)
- 建設・インフラ:サッシ、カーテンウォールなどの建築材料
- 飲料缶・包装:リサイクル性の高さから需要が底堅い
特にアルミ電線の需要拡大が注目されています。日本電線工業会のデータでは、2025年のアルミ電線出荷量は前年比8%増の2万6千トンに達しており、銅代替としての需要が加速しています。
2026年のアルミ価格見通し
主要機関の2026年アルミ価格予測コンセンサス
当サイト発行の「LME6金属予測レポート 2026年版」より、主要機関の予測を比較します。
| 調査機関 | 2026年 予測価格(LME) | 公表時期 | 予測の核心 |
|---|---|---|---|
| Fastmarkets | 上半期 $3,200/t | 2025年11月 | 市場不足の想定で強含み。上昇余地あり |
| Goldman Sachs | 上半期平均 $3,150 / Q4 $2,500 | 2025年12月 | 前半は極めてタイト。後半は需要鈍化 |
| 丸紅 | 高値で $3,000超 | 2025年12月 | 中国の生産上限による供給不足化を重視 |
| ING Think | $2,900/t(年平均) | 2025年12月 | 2026年は不足想定。価格は強力に下支え |
全機関が$2,900/t以上を見込んでおり、中国の生産上限という構造的要因を最大の上昇ドライバーとして重視しています。
注目すべきポイントを整理します。
Fastmarkets($3,200/t): 銅精鉱のTC/RCなど製錬所の現場コストを定点観測する英国の価格報告機関であり、供給側の「目詰まり」を最も早く価格に織り込む能力があります。上半期$3,200という予測は中東リスクを含まない段階での数字であり、3月12日時点のLME $3,500超はこの予測をすでに上回っています。中東紛争が長期化すれば、さらなる上方修正もあり得ます。
Goldman Sachs(前半$3,150→Q4 $2,500): 「前半タイト→後半需要鈍化」という明確な二段構えのシナリオを示しています。後半の$2,500への下落予測は、インドネシアの新規精錬所稼働や、中東紛争収束を前提としている点に注意が必要です。
丸紅: アルミ地金の国内取扱量トップシェアを持ち、対日プレミアム(MJP)交渉を主導する立場にあります。彼らが「高値で$3,000超」と言い切る背景には、プレミアム市場を含めた現物需給のタイト感があります。
非鉄金属ナビの「一点予想」
当サイトでは、上記コンセンサスを踏まえた独自の一点予想を以下の通り設定しています。
2026年 LMEアルミ 年間平均予測:$3,000/t (参考:Reuters poll平均 $2,946/t)
方向性は「上」ですが、急騰というより”高値定着”の形になると見ています。
当サイトではReuters pollより少し上に置きました。その理由は、中国の「4,500万トンの天井」が完成したことで供給の弾力性が失われており、底堅い需要(軽量化・電力網・再エネ)と合わせて、以前のように「高値になれば中国が増産して下がる」というサイクルが効きにくくなったためです。
なぜ「前半高・後半調整」なのか
上半期(1〜6月)が強い理由:
- 中東紛争による世界供給の約1割への直接打撃が現在進行形
- LME・COMEX在庫が記録的低水準で、価格の上振れ余地が大きい
- 中国の生産上限により増産で対応できない
- 対日プレミアムの上昇が仕入れコスト全体を押し上げ
下半期(7〜12月)に調整が入りうる理由:
- インドネシアの大規模精錬プロジェクト(アダロ・ミネラルズ等)が本格稼働を開始し、新規供給が市場に出始める
- 中東紛争が収束に向かえば、GCC精錬所の操業再開でリスクプレミアムが剥落
- Goldman Sachsが想定するQ4 $2,500シナリオの背景となる需要鈍化リスク
LMEベースのレンジ予測(円建て換算付き)
| 期間 | LMEアルミ(ドル/トン) | NSP概算(参考) |
|---|---|---|
| 2026年上半期 | 2,900〜3,700 | 500〜570円/kg程度 |
| 2026年下半期 | 2,500〜3,200 | 450〜520円/kg程度 |
※NSP概算は為替155円前提の目安です。実際のNSPは3ヶ月平均+エクストラで算定されるため、LMEのスポット価格とは時間差があります。
調達担当者・スクラップ業者が今やるべきこと
基本方針:「前半の高値に備え、後半の調整を待つ」
2026年のアルミ市場は、銅と同様に「前半高・後半調整」のシナリオが有力です。ただし、中東紛争の帰趨という不確定要素が大きく、紛争長期化の場合は年後半も高値が続く可能性があります。
調達担当者向け:NSP改定サイクルを活用する
次期NSP(4〜6月期)の上昇に備える: 2025年12月〜2026年2月の日経平均地金が高水準で推移したため、4月改定のNSPは現行500円/kgからさらに上昇する可能性が高いです。NSP改定前に在庫を積み増すか、改定後の価格を織り込んだ予算設定を早めに行いましょう。
対日プレミアムにも注目: LME価格だけでなく、プレミアムの動向も仕入れコストを大きく左右します。丸紅の分析では一時200ドル超えの可能性も指摘されており、LME+プレミアムの合計で調達コストを試算することが重要です。
インドネシア供給の動向をウォッチ: 後半にインドネシアの新規精錬所が本格稼働すれば、供給増→価格調整の流れになる可能性があります。大量購入のタイミングとして、この供給増が確認された後の「調整局面」を狙う戦略も有効です。
スクラップ業者向け:上半期の「売り場」を逃さない
スクラップ集荷は今後さらに困難になる: 大手サッシメーカーや自動車メーカーがクローズド・ループ(自社内循環リサイクル)を加速しており、高品質なアルミスクラップが市中に出回りにくくなっています。LME連動だけでなく、この「物理的なスクラップ不足」が国内価格をさらに押し上げています。
上半期の高値は利確のチャンス: 中東リスクプレミアムが乗った現在の水準は、売却にとっては好環境です。紛争収束やインドネシアの供給増で下半期に調整が入るリスクを考えると、在庫の回転を早め、上半期のうちに利益を確定する戦略が合理的です。
二次合金メーカーとの関係強化: スクラップ不足が深刻化する中、安定した集荷先を持つスクラップ業者の存在感は高まっています。量の確保を優先して取引関係を深化させる好機でもあります。
NSP(アルミ地金価格)の計算方法(おさらい)
NSPの仕組みを理解しておくと、次回改定の事前予測が可能になります。
NSPの算出ルール:
①日経新聞に掲載される月間平均地金の「3ヶ月平均」を算出 ②1の位を四捨五入 ③エクストラ+10円を加算
対象月の決まり方: たとえば2026年4〜6月期のNSPを決めるには、2025年12月・2026年1月・2月の3ヶ月平均を使います。改定は期の前月(3月)の第1月曜日に日経新聞で2月の地金平均が発表された時点で確定します。
つまり、日々の地金相場をウォッチしていれば、次のNSPがいくらになるか事前にかなり正確に見積もれるのです。当サイトの相場情報ページでは、LME価格・為替(TTS)を毎日更新していますので、NSP試算にぜひご活用ください。
1冊にまとめました
銅・アルミ・ニッケル・錫・亜鉛・鉛の予測を、仕入れ・販売にそのまま使える形で。
まとめ:2026年のアルミ価格は「供給の天井」で高値定着
最後に、この記事のポイントをまとめます。
現状: LMEアルミは3,500ドル/トン超(3月12日、4年ぶり高値)。NSPは500円/kgで過去最高水準。
高騰の理由: 中国の「4,500万トンの壁」到達、中東紛争によるGCC精錬所の操業停止、在庫の記録的低水準、構造的な需要拡大が重なっている。
主要機関の予測: Fastmarkets $3,200/t、Goldman Sachs 上半期$3,150/Q4 $2,500、丸紅 $3,000超、ING $2,900/t。当サイトの一点予想は$3,000/t(年平均)。
今後の見通し: 「前半高・後半調整」がメインシナリオだが、中東紛争の長期化次第では年間を通じた高値も。インドネシアの新規精錬所の本格稼働が下半期の焦点。
実務での対応: NSP改定サイクルを先読みし、上昇前に在庫確保。スクラップ在庫は上半期に利確優先。後半の調整局面を大量購入のタイミングとして狙う。
当サイトでは相場情報やスクラップ価格を日々更新しています。また、アルミを含む6金属の予測を網羅した「LME6金属予測レポート 2026年版(PDF)」も無料で公開中です。
ご質問やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
※本記事の内容は2026年3月12日時点の情報に基づいています。相場予測は当サイト独自の分析であり、将来の価格を保証するものではありません。投資や取引の判断はご自身の責任でお願いいたします。
※本記事は最新情報が入り次第、随時更新しています。

