錫(スズ)の相場と今後の見通し【2026年3月最新】はんだ価格にも直結する史上最高値の背景と予測

$57,425/トン――。
2026年2月27日、LME錫が記録した史上最高値です。年初から2ヶ月で40%超の暴騰。1月26日に$56,800をつけた後、一時$46,000台まで急落しましたが、AI需要と供給不安を背景に再浮上し、2月末にさらなる高値を更新しました。

。年初からわずか1ヶ月足らずで40%超の暴騰。上海先物取引所では1日の取引量が年間世界消費量の2倍を超えるセッションが出現し、当局が高頻度取引業者の市場参入を禁止する異例の措置に踏み切りました。

その後は投機ポジションの巻き戻しで$46,000台まで調整が入りましたが、それでも前年同期比で70%以上の上昇を維持しています。これは一時的な投機の熱狂ではなく、「半導体の生命線」と呼ばれる錫の構造的な供給不足が、AI需要の爆発と正面衝突した結果です。

こんにちは。非鉄金属ナビ運営事務局です。

本記事では、錫相場がなぜ異次元の高騰を見せているのか、PricePedia・BMI(Fitch)・World Bank・Cofaceなどの予測データと、当サイト独自の一点予想を交えながら解説します。はんだ価格に直結する錫の動向は、電子部品メーカー・基板実装業者・スクラップ業者すべてにとって見過ごせないテーマです。

錫を含む6金属の予測を網羅した「LME6金属予測レポート 2026年版(PDF)」も無料で公開しています。本記事はそのレポートの錫セクションに、2026年1〜3月の劇的な市場変動を加筆したものです。

この記事で分かること:

  • 2026年3月時点の錫相場の現状と史上最高値の経緯
  • 錫が暴騰している3つの構造的理由
  • 主要機関の2026年錫価格予測コンセンサス
  • 当サイト独自の「一点予想」と上半期・下半期のシナリオ
  • はんだスクラップ業者・電子部品メーカーが今やるべきこと
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2026年3月時点の錫相場はどうなっている?

LME錫の推移:史上最高値から調整、そして再浮上

2026年に入ってからの錫相場は、非鉄金属の中でも群を抜く値動きを見せています。

時期LME錫(ドル/トン)出来事
2025年11月平均約37,000年後半から上昇トレンドが鮮明化
2026年1月初旬約40,000年初から急伸開始
2026年1月26日56,800史上最高値を記録
2026年2月初旬46,600投機巻き戻しで急落
2026年2月27日57,425史上最高値を更新
2026年3月45,000〜48,000中東リスクで上下に振れる展開

1月の急騰は、AIデータセンター関連のはんだ需要への期待から投機マネーが殺到したことが直接の原因です。上海先物取引所では1日の取引量が年間世界消費量(約40万トン)の2倍を超える異常事態が発生し、中国当局が「盲目的にトレンドに追随するな」と警告。高頻度取引業者の参入を禁止する措置が取られ、その後急速に$46,000台まで調整しました。
しかし、調整は一時的なものでした。AI需要と供給不安というファンダメンタルズが健在であったため、2月中旬から再浮上を開始。2月27日には$57,425/トンと、1月の高値を上回る史上最高値を更新しています。投機が剥落した後に「実需ベース」で高値を更新したという事実は、背後にある構造的な供給不足が本物であることの強い証拠です。上海先物取引所では1日の取引量が年間世界消費量(約40万トン)の2倍を超える異常事態が発生し、中国当局が「盲目的にトレンドに追随するな」と警告。高頻度取引業者の参入を禁止する措置が取られ、その後急速に調整しました。

しかし、調整後の水準が$45,000〜49,000で安定していることは注目に値します。投機が剥落しても高値圏を維持しているのは、背後にある実需と供給制約が本物であることの証拠です。

はんだ価格への波及

錫はすべての鉛フリーはんだの主成分(96.5%前後)であり、LME錫価格の高騰ははんだ価格に直結します。電子基板の実装コスト、ひいては電子機器全般の製造原価に影響を及ぼすため、エレクトロニクス業界全体が錫相場に注目しています。

当サイトでも以前「はんだ買取相場が過去最高値!不要な半田(かす・ペースト)を高く売るコツ」の記事でお伝えした通り、はんだスクラップの買取価格も過去最高水準にあります。


錫が暴騰している3つの構造的理由

理由①:AI・データセンターという「錫の爆食」

錫が急騰した最大の構造的ドライバーは、AIデータセンターの爆発的な建設ラッシュです。

はんだは電子基板上の部品を接合する不可欠な材料であり、世界の錫消費の約50%を占めています。AIサーバーは従来のサーバーよりも実装部品数が多く、1台あたりに使用するはんだの量が大幅に増加します。データセンターの増設ラッシュは、錫に対して「代替が効かない構造需要」を生み出しています。

世界半導体工業会(SEMI)の最新レポートでは、グローバルのシリコンウエハー出荷量が2026年に前年比5.2%増の13,500百万平方インチ(MSI)に達する見通しです。半導体の生産が増えれば、はんだとしての錫の消費も連動して増加します。

World Bankもこの構造需要を認識しており、錫を「デジタル移行において最も恩恵を受ける金属」の一つと位置づけています。

理由②:インドネシア・ミャンマー・コンゴの「三重の供給不安」

錫の供給リスクは、複数の産出国で同時に発生しています。

インドネシア(世界第2位の産出国): スビアント大統領がスマトラ島の違法錫鉱山1,000ヶ所の閉鎖を命令。公式な生産枠は2025年の53,000トンから2026年は60,000トンに引き上げられたものの、違法鉱山の閉鎖による減産の方が大きく、実質的な供給は減少する見込みです。

ミャンマー: 中国向け錫鉱石の主要供給源ですが、政治的不安定と紛争が続いており、採掘量は市場予測を下回る水準で推移しています。

コンゴ民主共和国(DRC): 世界生産の約6%を占めるビシエ鉱山がある北キブ州では、M23反政府勢力とコンゴ軍の衝突が頻発し、採掘活動に断続的な支障が出ています。

これら3ヶ国だけで世界の錫供給の約3割に影響が及んでおり、Cofaceの分析では「2026年の精製錫の生産成長率は約3%にとどまり、需要増加率3.5%に追いつかない」と見込まれています。つまり、2026年は2021年以来初の供給不足に転じる年です。

理由③:LME在庫の低水準と投機資金の流入

LMEおよびSHFE(上海先物取引所)の錫在庫は歴史的な低水準にあります。在庫が薄いところに投機マネーが流入すると、価格が急騰しやすい構図が出来上がります。

1月の急騰は、まさにこの構図が極端な形で表出したものでした。在庫の再積み上げ(リストッキング)と投機的な買いが同時に発生し、価格を押し上げ、それがさらなる買いを呼ぶスパイラルが生まれました。

当局の介入で投機は一旦収束しましたが、「在庫が薄い」という根本的な状況は変わっていません。今後も何かのきっかけ(供給トラブル、AI関連ニュースなど)で急騰するリスクは残っています。

本記事で解説している錫の2026年価格予測を含む、LME 6金属(銅・アルミ・ニッケル・錫・亜鉛・鉛)の予測レポートを無料公開中です。→ 2026年 LME6金属予測レポートを受け取る


2026年の錫価格見通し

主要機関の2026年錫価格予測コンセンサス

当サイト発行の「LME6金属予測レポート 2026年版」およびその後の最新データを踏まえ、主要機関の予測を比較します。

調査機関2026年 予測価格(LME)公表時期予測の核心
Coface約$45,000/t(上半期平均)2026年2月供給不足転換。前年比+40%。投機沈静化後も高値維持
PricePedia約$41,000/t(年平均)2025年12月供給制約が続き高止まり
BMI(Fitch)$35,000/t(年平均)2025年12月従来の$32,000から上方修正。供給問題の継続を反映
World Bank$34,000/t(年平均)2025年10月Commodity Markets Outlook の予測値

予測のレンジが$34,000〜$45,000と非常に広いのが錫の特徴です。これは、供給の不確実性(インドネシア・ミャンマー・コンゴ)と投機マネーの影響が極めて大きく、予測が難しい金属であることを示しています。

注目すべきは、最も保守的なWorld Bank($34,000)でさえ、2025年の年間平均を大きく上回る予測を出していることです。つまり「高値圏が続く」という点では全機関の見方が一致しています。

また、1月の急騰を受けてCofaceが発表した最新予測では、上半期平均$45,000/tという数字が出ています。これはレポート発行時点の予測($35,000〜$41,000)を大幅に上回るもので、AIデータセンター需要と供給不足の深刻さを改めて裏付けています。

非鉄金属ナビの「一点予想」

2026年 LME錫 年間平均予測:$36,500/t (レポート発行時点。足元の相場を踏まえると上方修正の余地あり)

方向性は「上」で、かつボラティリティが極めて高い。ベースメタル6金属の中で最も予測が難しい金属です。

当サイトの一点予想$36,500/tは、PricePedia($41,000)の「強気の上限寄り」とBMI($35,000)の「保守寄り」の間に置いた数字です。ただし、1〜2月の実績が$45,000〜56,800で推移したことを考えると、年間平均が$40,000を超える可能性も十分にあります。

上半期・下半期のシナリオ

上半期(1〜6月):高ボラティリティの高値圏

  • AIデータセンター関連の投資サイクルが本格化し、はんだ需要が上振れ
  • インドネシアの違法鉱山閉鎖の影響がフルに顕在化
  • LME在庫の低水準が続き、投機資金の再流入リスクあり
  • 想定レンジ:$40,000〜$55,000

下半期(7〜12月):やや落ち着くが高止まり

  • インドネシアの公式生産枠拡大(60,000トン)が徐々に供給に反映
  • ミャンマーでの採掘再開の動きが一部確認される可能性
  • 投機マネーの過熱感が薄れ、ファンダメンタルズに沿った価格形成に
  • 想定レンジ:$33,000〜$45,000

はんだスクラップ業者・電子部品メーカーが今やるべきこと

はんだスクラップ業者向け:歴史的な売り場

錫相場の高騰は、はんだスクラップの買取価格を過去最高水準に押し上げています。はんだかす、はんだペースト残渣、基板からの錫回収など、あらゆる錫含有スクラップの価値が急上昇しています。

上半期は「売り優先」の姿勢を明確に: 1月の$56,800のような極端な急騰は再び起こりうるものの、予測は困難です。足元の$45,000〜48,000でも十分に高い水準であり、在庫を抱え続けるよりも回転を早めて利益を確定するのが合理的です。

鉛フリーはんだスクラップの選別を徹底: 錫含有率が高い鉛フリーはんだ(Sn96.5%)は、鉛入りはんだ(Sn63%前後)と比べて単価が大きく異なります。混合出荷を避け、選別精度を上げることで、買取価格を最大化できます。

電子部品メーカー・基板実装業者向け:調達コスト上昇への備え

はんだ調達コストの予算見直し: 2025年の予算前提がLME錫$30,000台であった場合、2026年の実勢は$40,000〜$50,000台です。予算の30〜60%の上振れを織り込んだ修正が必要です。

長期契約の活用を検討: 錫のボラティリティは非鉄金属の中でも突出しています。スポット購入だけに依存すると、1月のような急騰時にコストが一気に跳ね上がるリスクがあります。はんだメーカーとの長期契約やヘッジの活用を検討しましょう。

使用量削減の技術的対応: 長期的には、はんだの微細化(マイクロソルダリング)やはんだレス接合技術の研究開発投資も選択肢に入ります。ただし短期的には代替が効かないため、まずは調達の安定確保が最優先です。


錫という金属の基本をおさらい

錫に馴染みの薄い方のために、基本データを簡単に整理しておきます。(詳細は「錫(スズ)とはどんな金属?」で解説しています。)

項目内容
元素記号Sn(ラテン語 Stannum に由来)
融点約232℃(金属の中でも極めて低い)
世界消費の約50%はんだ(電子基板の部品接合)
主要産出国中国(約30%)、インドネシア(約20%)、ミャンマー、ペルー
日本の主要輸入元豊田通商が約4割を取り扱い

錫は融点が低く加工しやすいことから、紀元前3000年の青銅器時代から人類に使われてきた金属です。現代では「半導体の生命線」として、エレクトロニクス産業に不可欠な存在となっています。

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まとめ:2026年の錫は「ベースメタルの勝ち組」

最後に、この記事のポイントをまとめます。

現状: LME錫は2月27日に史上最高値$57,425/tを記録。1月の$56,800から一時$46,000台に調整した後、実需ベースで高値を更新。前年同期比+70%超の水準を維持。

高騰の理由: AIデータセンターのはんだ需要爆発、インドネシア・ミャンマー・コンゴの三重の供給不安、LME在庫の歴史的低水準が重なり、2021年以来初の供給不足に転換。

主要機関の予測: Coface $45,000/t(上半期)、PricePedia $41,000/t、BMI $35,000/t、World Bank $34,000/t。当サイトの一点予想は$36,500/t(年平均)だが、足元の実勢を踏まえると上方修正の余地あり。

今後の見通し: 上半期は高ボラティリティの高値圏($40,000〜$55,000)。下半期はインドネシア増産の寄与で若干落ち着くが、供給不足の構造は変わらず高止まり($33,000〜$45,000)。

実務での対応: はんだスクラップ業者は上半期に売却を優先。電子部品メーカーは予算の上方修正と長期契約・ヘッジの活用を検討。

当サイトでは相場情報スクラップ価格を日々更新しています。また、錫を含む6金属の予測を網羅した「LME6金属予測レポート 2026年版(PDF)」も無料公開中です。

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※本記事の内容は2026年3月12日時点の情報に基づいています。相場予測は当サイト独自の分析であり、将来の価格を保証するものではありません。投資や取引の判断はご自身の責任でお願いいたします。

※本記事は最新情報が入り次第、随時更新しています。


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